新型コロナの流行が始まった頃から、ロキソニンなどのNSAIDsを解熱剤として使用すると新型コロナを悪化させるのではないか、という仮説がありましたね。
流行開始から1年以上が経ちましたが、現時点ではどのような評価になっているのでしょうか。
①新型コロナには効かない?
結局、新型コロナに罹ったときにNSAIDsを飲むと症状が悪化するかどうかはまだ結論が出ていません。
新型コロナの流行開始から1年が経ち、この
「NSAIDsは新型コロナを悪化させる」
という仮説を検証するための研究がいくつか報告されています。
韓国からのデータを解析した報告
入院する前の7日間にNSAIDsを飲んでいた新型コロナ患者は、NSAIDsを飲んでいなかった人よりも死亡、ICU入室、人工呼吸器の使用が1.5倍増える、という結果が。
ただし、この研究ではNSAIDsを飲んでいた人は、高齢者や基礎疾患のある人が多く、NSAIDsが直接の悪化の原因ではない可能性があるようです。
一方、
デンマークからは対照的な結果
新型コロナと診断された人のうち、NSAID使用者(新型コロナのPCR検査の30日前までにNSAIDを処方されていた人)と非使用者とを比較したところ、NSAIDs使用者は非使用者と比べても、特に死亡率、入院リスク、ICU入室リスクなどは変わらなかったという結果が。
また、イスラエルからも同様に、入院中にNSAIDsを投与された人とアセトアミノフェンを投与された人では、死亡率や人工呼吸器の使用率に差はなかった、という報告が。
ということで結局今のところ悪化するかどうかは結論がでてないんですね。
②そもそも感染症のときにNSAIDsは良くない?
新型コロナに限らず、感染症全般に関するNSAIDsの使用についてはすでに否定的な報告が多くあります。
例えば、インフルエンザや敗血症(感染症により生命を脅かす臓器障害が引き起こされる状態)の際にはNSAIDsは使用しない方が良いと言われています。
動物実験ではインフルエンザに対して解熱剤を使用した方が使用しない場合と比較して1.34倍死亡率が高かったとする報告があり、ヒトに対する影響についても現在臨床研究が行われており、結果が待たれるところです。
また敗血症の患者に解熱薬を使用した場合に死亡率が高くなったというヒトでの報告もあります。
なお、同じ解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンの使用は重症感染症が疑われる患者への使用で特に経過に影響を与えなかったという報告もあり、アセトアミノフェンの使用は比較的安全性が高いと考えられます。
③感染症の際に熱を下げる手段としては何がいい?
感染症の際に熱を下げる手段としては、
NSAIDsよりもアセトアミノフェンの使用が比較的安全であります。
そもそも解熱鎮痛薬には主にアセトアミノフェン、NSAIDsの2種類が使用されますよね。
・NSAIDsと言えば ロキソニン や ブルフェン など。
・アセトアミノフェンは タイレノールA や バファリンルナJ など。
これらの薬は飲んでから1〜2時間後に解熱効果が出てきて、4〜6時間後には効果がなくなります。
かと言ってずっと飲み続けたり多く飲みすぎたりすると副作用が出やすくなります。
NSAIDs → 消化性潰瘍、腎障害などの副作用が多い。
アセトアミノフェン → 肝機能障害の副作用が多い。
解熱薬は用法用量を守って使用するようにしましょう。
④まとめ
・新型コロナに罹ったときにNSAIDsを飲むと症状が悪化するかどうかは
まだ結論が出 ていない
・インフルエンザや敗血症などの感染症ではNSAIDsを飲むと死亡率が
高くなるという報告がある
・感染症の際に熱を下げる手段としてはNSAIDsよりもアセトアミノフェンの
使用は比較的安全である
ということです。
ロキソプロフェンなどのNSAIDsは薬局などで手に入りやすい薬剤ですが、特に熱の原因が感染症と分かっている場合には、使用には注意が必要のようですね。