新型コロナの感染経路 いま分かっていること、いまできること

コロナウイルス
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米国疾病対策センター(CDC)が、新型コロナの感染経路に関する見解を2021年5月7日付けで改訂しました。
新型コロナに感染するリスクは、さまざまな条件によって左右されます。
このたびの改訂文書では、それらの条件が丁寧に説明されています。
ここでご紹介しますので、できれば最後までお読みください。

用語について

原文で使われる専門用語は、以下のように翻訳しています。

・droplet → 飛沫

・aerozol particle → エアロゾル粒子

・respiratory fluid → 気道分泌物

なお、気道分泌物は、唾液や鼻水、痰などの気道で産生される液体だと考えてください。
また、改訂文書では、鼻や口から微粒子の状態で排出される気道分泌物を、大きさによって飛沫やエアロゾル粒子と呼んでます。
それぞれを区別する厳密なサイズ(粒径)について記載はありませんが、

・大きなもの = 飛沫
・小さな軽いもの = 非常に微細な飛沫(very fine droplet)
エアロゾル粒子

と区別して表現しています。

微粒子の発生場所と到達距離

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文書の冒頭に下枠内のような解説があります。
太字の部分がとても重要なのですが、理由は文末の「補足」でご説明します。
ここで押さえておきたいのは、次の2点です。

  • 鼻と口から飛沫やエアロゾル粒子などの様々な大きさの微粒子が同時に排出される
  • 発生源からの到達距離は微粒子の大きさや重さ(水分量)によって異なる

人が静かな呼吸、会話、歌唱、運動、咳、くしゃみをすると、鼻や口からさまざまな大きさの飛沫が生じます

最も大きな飛沫は、数秒から数分で落下します。
最も小さな飛沫や、これらの水分が急速に蒸発してできたエアロゾル粒子は、数分から数時間空気中を浮遊することができます。

3つの感染経路

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新型コロナウイルス(以下、ウイルス)感染は、ウイルスを含む気道分泌物への曝露によって起こりますが、CDCはこのたび「曝露のしかた=感染経路」をこれまでに蓄積された科学的知見に基づき、次の3つに整理しなおしました。

1.微細な飛沫とエアロゾル粒子が浮遊する空気を吸い込む

この経路で感染するリスクは、感染性のある人から3~6フィート(約1~2メートル)以内が最大としています。
発生源から近い距離では、空気中の微細な飛沫とエアロゾル粒子の濃度が最も高いからです。

2.飛沫や微粒子が、覆われていない粘膜に付着する

例えば、咳やくしゃみをするときに出る飛沫を直接目に浴びるような状況です。1と同様に、この経路で感染するリスクが最も高いのは、発生源から近い場所だとしています。

3.ウイルスを含む気道分泌物で汚染された手指、あるいは、ウイルスで汚染された環境やモノの表面に触れた手指で粘膜に触れる

感染リスクは曝露するウイルス量で決まる

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鼻や口から出る飛沫や微粒子は、発生源から離れる方向に移動します。
そのため、感染のリスクは発生源から遠い場所ほど、また、時間が経つほど下がります

CDCは、空気や環境・モノの表面を介して感染する可能性は次の2つで決まるとしています。

1. 空気中のウイルス濃度の低下

ウイルスを含む飛沫のうち、大きくて重いものは、重力によって地面や環境・モノの表面に落下します。
空気中に残った非常に微細な飛沫とエアロゾル粒子も、やがて周囲の空気と混ざりあって濃度が低下していきます。

2.ウイルスの活性や感染性の低下

温度、湿度、紫外線(日光)などの影響を受けながら、時間の経過とともに、より多くのウイルスが死滅し、感染性を失っていきます。

感染者から2メートル以上離れたところで感染するリスク

換気の喚起|FUJIOH

既に述べたように、微粒子の発生源から離れるほど吸入による感染のリスクは下がるため、CDCは、感染性のある人(以下、感染者)から2メートル※以上離れた場所で感染する可能性は比較的低いとしています。

但し、以下の状況にある屋内空間に、感染者が長時間(15分以上)滞在した場合には、屋内のウイルス濃度が高まるため、2メートル以上離たところでも、あるいは感染者が退出した直後の空間を通過するだけでも感染するリスクが生じます。

※原文では6フィート(180センチメートル)となっていますが、わかりやすさを優先して2メートルとしています。

1 換気が不十分な閉鎖空間

このような空間では、鼻や口から出た気道分泌物、特に非常に微細な飛沫やエアロゾル粒子の濃度が高まりやすくなります。

2 吐き出す息の量が多い

運動、歌を歌う、叫ぶといった行為を行うと、産生される微粒子の量が増えます。

3. 1と2の状況にある屋内空間での滞在時間が長い

特に15分以上滞在すると感染するリスクが高まります。

CDCが推奨する感染対策はどうかわったか

基本的に変わっていません。

CDCは今回の改訂文書においても、これまで通り、互いに物理的距離を保つこと、マスクを着用すること、換気を行うこと、混雑した屋内空間に滞在しないことなど、これまで推奨されている対策を行うことで吸入、粘膜汚染の両方の経路による感染リスクを下げることができるとしています。

また、改訂文書では吸入→粘膜付着の順番に記載がありますが、どちらの経路による感染が多いのかは不明であり、明らかにすることは困難としています。

汚染された環境やモノの表面を介して感染するリスクについては、これまでに蓄積された知見をもとに低いと判断しています。
ただ、リスクはゼロではないので、石鹸と流水を用いた手洗いを行うこと(手洗い設備がなければアルコール製手指消毒薬の使用)が推奨されています。

このようなCDCの見解に対して、近距離でも空気を介した感染のリスクがある以上、不織布マスクよりも機密性の高いマスクや換気の改善ついてより踏み込んだ勧告が必要だという批判もあります。

まとめ

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感染者の近くでウイルスを含む微粒子を吸入して感染するリスクがあるとCDCが明記したことで、マスクを着けていても人と1~2メートルの物理的距離を保つことや換気の悪い空間を避けること換気を改善することの重要性がより明確なメッセージとして発信されることになったと思います。

望ましいマスクの種類や換気に関する推奨事項は、今後変わる可能性もありますので、引き続き注目していきたいと思います。
これらの感染経路を遮断するために、当面私たちにできることは下記の補足に記載しました。

ただ何より、最も確実性の高い感染予防策はワクチン接種だと言ってよいと思います。ワクチンについては、信頼性の高い情報源(枠内)から正しい情報を得て、接種を判断することをお勧めします。

補足

① 新型コロナの感染経路に関する議論

CDCはこれまで新型コロナに関するものを含む様々な感染対策ガイドラインで、鼻や口(発生源)の近くでは、ウイルスを含む大きな微粒子(=飛沫)が排出されて顔の粘膜に付着して飛沫感染を起こし、発生源から離れたところでは、飛沫の水分が失われてできた微粒子(=エアロゾル)の吸入によって空気を介した感染が起こると説明してきました。

つまり、発生源からの距離に応じて感染対策を区別していました。

一方、鼻や口からは大きなものだけでなく、小さなものを含めて、様々なサイズの微粒子が排出されるので、発生源からの距離で感染対策を区別するべきではないという主張は以前からありました。

今回の改訂文書では、CDCは冒頭の枠内にお示ししたように、発生源の近くでは様々な大きさの微粒子が排出され、発生源の近くでは粘膜汚染だけでなく、それらの微粒子を含む空気の吸入による感染も起こり得るということを初めて明記しました。
ただ、リスクは一律ではなく、本文中で紹介したようにさまざまな条件によって変わることを理解したうえで、感染対策に活かす必要があります。

なぜこのタイミングでの改訂なのか?変異ウイルスが流行しているからなのか??といった憶測がSNS等で流れていますが、CDCは文書の冒頭で「ウイルスに関する最新の知見に合わせてアップデートした」としか述べていませんし、上記のとおり、以前からなされていた空気を介した感染に関する主張が正しいと判断するに足る知見が蓄積されたからだと素直に受け取りたいと思います。

② N95マスクじゃなくていいのか?

64-6360-56 M1195B/N95マスク(折りたたみ型) D0036 【AXEL】 アズワン
N95マスクとは、粒径が0.3マイクロメートルの微粒子を95%以上捕集する効果のあるマスクで、医療現場において結核菌や麻疹ウイルスなどによる空気感染が懸念されるときに用いられます。

新型コロナの診療の際には、気管挿管など、微粒子が大量に生じる懸念がある場合に限り使用されています。

改訂文書にあるように、感染者の近くで微細な飛沫やエアロゾルを含む空気を吸いこんで感染することがあるのなら、サージカルマスクよりもフィルター性能が高いN95マスクを着けたほうが良いのではないかという疑問が生じる方もいると思います。

現時点では世界保健機関(WHO)もCDCも日常生活におけるN95マスクの使用を推奨していません。

N95マスクは、正しく着けるとかなりの息苦しさを感じます。

吸気はすべてフィルターを通過させないといけないため、マスクと顔の間に隙間をつくらないように装着するからです。

したがって、医療現場でも長時間の着用は通常は行いません。

N95マスクの代わりに、同等の性能を持つ電動ファン付呼吸用保護具(powered air-purifying respirator, PAPR)を用いることもあります。

いずれも日常生活における使用は現在推奨されていません。

マスクの着用については今後見直される可能性がありますが、すぐにできることとしては、不織布のマスクを選ぶことと、マスクと顔の間になるべく隙間をつくらないように着用することがあると思います。

マスクを二重(不織布マスクの上から布マスク)にすると吸い込む飛沫の量が減るという調査結果もあります。

苦しく感じないのであれば、試してみるとよいかもしれません。

不織布のマスクで肌荒れがするような場合は、なるべく目の詰まった2層以上(理想は3層)の布マスクを選ぶとよいでしょう。

ウレタンのマスクは飛沫を抑える効果も、吸い込む効果もかなり弱いので推奨されません。

不織布マスクの鼻あて(針金)は鼻の形に添うように整形し、鼻から顎までを覆います。

筆者作成
筆者作成

 

左の写真のような隙間ができるのを防ぐために、右の写真のようにゴムを結ぶか、不織布マスクの上から布マスクを着けることなどが推奨されています。
苦しくなければ試してみると良いでしょう。

Brooks JT, Beezhold DH, Noti JD, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2021;70:254–257.
Brooks JT, Beezhold DH, Noti JD, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2021;70:254–257.

 

この記事は2021年5月8日現在の情報に基づいて記載しています。
今後蓄積される知見によって記載されている推奨事項等が変わる可能性があることをご承知おきください。

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