データ分析で頻繁に使われる「分散」。
データのばらつき(散らばり具合)を数値で把握する重要な統計指標です。
Excelには分散を求めるための関数が複数用意されていますが、
「どれを使えばいいの?」
「不偏分散って何?」
と迷う場面も多いはずです。
この記事ではExcelで分散を正しく求める方法を基本から応用まで解説します。
Contents
そもそも「分散」とは?

- 分散とは データが平均からどれくらい散らばっているか(ばらつき度合い)を表す統計指標
- 値が大きいほど散らばりが大きい、値が小さいほどまとまっている
- 分散の単位は「元のデータの単位の2乗」になる点に注意
例:身長(cm)の分散 → 単位は cm² になる
Excelで使える分散計算関数一覧
関数名 | 対象 | 使用用途 |
---|---|---|
VAR.S | サンプル(標本)分散 | 通常はこちらを使用(不偏分散) |
VAR.P | 母集団分散 | 全データが母集団とみなせる場合に使用 |
VARA / VARPA | データに文字や論理値を含む場合 | 特殊ケース用 |
VAR(旧式) | 非推奨(互換用) | 互換モード以外ではVAR.S使用を推奨 |
分散を求める具体的手順
例データ:A1:A10 に数値データがあると仮定
不偏分散(サンプル分散)
=VAR.S(A1:A10)
母集団分散
=VAR.P(A1:A10)
VAR.S(不偏分散)とVAR.P(母集団分散)の違い

比較項目 | VAR.S | VAR.P |
---|---|---|
対象 | 標本(サンプルデータ) | 母集団全体 |
分母 | n-1 | n |
用途 | 通常の調査・抽出データ分析 | 全数調査や全データ保有時 |
実務では**VAR.S(不偏分散)**が圧倒的に使用頻度が高いです。
分散から標準偏差を求める方法
- 標準偏差 = 分散の平方根
Excel関数
- 不偏標準偏差
=STDEV.S(A1:A10)
- 母集団標準偏差
=STDEV.P(A1:A10)
共分散・相関係数も一緒に理解しよう

共分散(COVARIANCE.S / COVARIANCE.P)
- 2系列のデータのばらつきの関係を表す
=COVARIANCE.S(A1:A10, B1:B10)
相関係数(CORREL)
- -1 ~ 1 の範囲で強さ・向きまでわかる
=CORREL(A1:A10, B1:B10)
Excelで分散分析(ANOVA)を行う方法
「分析ツール」アドインの利用
- 「ファイル」→「オプション」→「アドイン」→「分析ツール」有効化
- データタブ →「データ分析」→「分散分析」選択
- データ入力 → 出力結果から分散分析表を確認
グループ間の平均差検定(ANOVA)もExcelで可能です。
よくある質問(FAQ)

Q1. VAR.SとVARの違いは?
→ 基本は同じ計算式(不偏分散)ですが、VARは旧バージョン用。
新規ではVAR.Sを使用してください。
Q2. 分散が0になるのはどういう時?
→ 全てのデータが同じ値の時(ばらつきゼロ)分散は0になります。
Q3. 複数列のデータ範囲に使うには?
→ 範囲を複数指定できないため、列ごとに個別に計算が必要です。
Q4. 分散関数は空白セルや文字が含まれていても使えますか?
→ 数値セルのみ計算対象。
文字列は自動で除外されます(VARAなど特殊関数除く)。
まとめ
- 実務の分散計算は「VAR.S(不偏分散)」が基本
- 全数データなら「VAR.P(母集団分散)」を使用
- 標準偏差はSTDEV.S/STDEV.P、相関はCORRELを活用
- 分散分析(ANOVA)もExcelで対応可能
分散の計算は品質管理・製造管理・教育・医療・ビジネス分析などあらゆる場面で重要です。
Excelの分散機能を正しく使いこなし、データの「ばらつき」をしっかり把握しましょう!