特別支給の老齢厚生年金は、通常の老齢厚生年金とは異なり、特定の条件を満たした場合に60歳から受給できる制度です。
では、この特別支給の老齢厚生年金に繰り下げ制度は適用されるのでしょうか?
本記事では、繰り下げの適用可否、メリット・デメリット、判断基準について詳しく解説します。
Contents
特別支給の老齢厚生年金とは?
1. 特別支給の老齢厚生年金の概要
特別支給の老齢厚生年金は、昭和36年4月1日以前に生まれた方が対象で、通常65歳から受給可能な老齢厚生年金を、60歳から65歳までの間に一部受給できる制度です。
- 対象:厚生年金に加入していた期間がある人。
- 内容:報酬比例部分(および条件を満たす場合の定額部分)を受給。
- 目的:高年齢者雇用安定法が施行される以前の制度を補完するため。
2. 通常の老齢厚生年金との違い
特別支給の老齢厚生年金は、65歳から始まる本来の老齢厚生年金に先立ち、早期に受け取れる特典的な制度です。
そのため、通常の老齢厚生年金と取り扱いが異なり、繰り下げ制度の適用にも違いがあります。
特別支給の老齢厚生年金は繰り下げ可能?
1. 繰り下げ制度の概要
繰り下げ受給とは、年金の受給開始年齢を遅らせることで、その後の受給額を増やす仕組みです。
1カ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増額されます。
2. 特別支給には繰り下げは適用されない
特別支給の老齢厚生年金には、繰り下げ受給の制度が適用されません。
その理由は以下の通りです。
- 特別支給は65歳までの限定的な制度であり、通常の年金の増額制度の対象外である。
- 特別支給を受けずに65歳まで待った場合、報酬比例部分は本来の老齢厚生年金として支給されますが、増額はありません。
繰り下げが可能な場合のメリットとデメリット
1. 繰り下げ可能なケース(通常の老齢厚生年金)
65歳以降に受給を繰り下げる場合、以下のメリットとデメリットがあります。
メリット
- 受給額の増加
年金を1カ月繰り下げるごとに0.7%、最大42%増加(70歳まで繰り下げた場合)。 - 長生きした場合に有利
生涯受給額が結果的に増える可能性が高まります。
デメリット
- 短期的な収入減少
繰り下げ期間中は年金を受け取れないため、生活費に影響が出る可能性があります。 - 寿命によるリスク
受給開始が遅れると、結果的に総受給額が減る可能性があります。
繰り下げを選択する際の判断ポイント
1. 健康状態を考慮する
長期間受給する可能性がある場合は繰り下げが有利ですが、健康状態によっては早めに受け取るほうが良い場合もあります。
2. 他の収入源を確認
退職金や貯蓄、他の収入が十分にある場合、繰り下げを選択する余裕が生まれます。
逆に収入源が少ない場合は早期受給が適しています。
特別支給の年金手続きでよくある質問(FAQ)
Q1. 特別支給の老齢厚生年金は65歳以降に繰り下げられますか?
- いいえ。特別支給は65歳までの限定的な制度であり、繰り下げは適用されません。
Q2. 特別支給を受けずに65歳まで待った場合、増額はありますか?
- 特別支給を受けずに65歳まで待っても増額はありません。ただし、65歳から受け取る老齢厚生年金は通常通り支給されます。
Q3. 一度受給を開始した特別支給の老齢厚生年金を繰り下げられますか?
- 一度受給を開始した年金は繰り下げることはできません。
まとめ:特別支給の老齢厚生年金の仕組みを理解し適切な判断を
特別支給の老齢厚生年金は、繰り下げ制度の対象外であるため、受給時期の選択肢は限られています。
しかし、65歳以降の通常の年金については繰り下げを選択することで、受給額を増やすことが可能です。
自身の健康状態や収入状況に応じて、最適なタイミングを見極めましょう。