退職金は人生の中で一度きりの大きな収入です。
その受け取り方法として、「一括受け取り」と「分割受け取り」が選べる場合があります。
しかし、受け取り方法によって税金やその後の生活設計に大きな影響を与えることを知っていますか?
この記事では、退職金を一括で受け取る場合と分割で受け取る場合の税金の違いや、それぞれのメリット・デメリット、注意点について詳しく解説します。
自分に合った受け取り方法を選び、退職後の生活をより充実させましょう。
Contents
退職金の受け取り方法と税制優遇の仕組み
まず、退職金の受け取り方法についておさらいします。
一括と分割では適用される税制優遇が異なるため、それぞれの仕組みを把握しておくことが重要です。
一括受け取りの場合
退職金を一括で受け取る場合、「退職所得控除」という特別な税制優遇が適用されます。
この控除により、多くの場合、退職金の税負担は大幅に軽減されます。
退職所得控除の計算方法
- 20年以下の勤務期間:40万円 × 勤続年数
- 20年を超える勤務期間:70万円 ×(勤続年数 - 20年) + 800万円
例:30年勤務の場合
40万円 × 20年 + 70万円 ×(30年 - 20年) = 1,500万円が控除されます。
課税対象額の計算
- 課税対象額 = (退職金 - 退職所得控除)× 1/2
→ 控除額が大きいため、多くの人が非課税または低税率で済むことが多いです。
分割受け取りの場合
退職金を分割で受け取る場合、毎年の受け取り額に応じて「給与所得」や「公的年金等控除」が適用されます。
これは年金形式の受け取りと同じ税制が適用されます。
公的年金等控除の計算例(65歳以上の場合)
- 年金受け取り額が 120万円以下:全額非課税
- 年金受け取り額が 120万円超〜410万円以下:収入額に応じて控除額が設定されます。
iDeCoと【退職金】を同時に受け取らない!税負担を軽減する時期の調整方法
【iDeCo】と退職金を5年ずらすべき理由とは?節税効果を最大化する方法
【退職金】と401kの税金を徹底解説!効率よく受け取る方法と節税ポイント
転職した場合の【退職金】の勤続年数はどう計算される?通算ルールと注意点を徹底解説
【退職金】が増税?いつから始まる?税制改正の内容と影響を徹底解説
一括受け取りと分割受け取りの税金の違い
受け取り方法による税金の違いを具体的なケースで比較してみましょう。
シミュレーション:退職金2,000万円を受け取る場合
- 勤続年数:30年
- 退職所得控除額:1,500万円
【一括受け取りの場合】
- 退職金:2,000万円
- 控除額:1,500万円
- 課税対象額 = (2,000万円 - 1,500万円)× 1/2 = 250万円
→ この250万円に所得税・住民税が課されます(税率は10〜20%程度)。
【分割受け取りの場合】
- 2,000万円を年金形式で20年間受け取る → 毎年100万円受け取り
- 100万円は「公的年金等控除」の範囲内 → 非課税または低税率で済む場合が多い。
結論:分割受け取りにすると、控除額を毎年適用できるため、税負担をさらに軽減できます。
一括受け取りのメリット・デメリット
メリット
- 一度に大きな金額を受け取れる
- まとまった資金を手に入れられるため、大きな支出(家の購入やローン返済など)に対応しやすい。
- 退職所得控除の適用で税金が軽減される
- 控除額が大きいため、多くの場合、課税対象額は非常に低く抑えられます。
- 運用や投資に活用できる
- まとまった金額を資産運用に充てることが可能です。
デメリット
- その後の収入源がなくなる可能性がある
- 一度に受け取るため、生活資金が枯渇しないよう注意が必要です。
- 使いすぎのリスク
- まとまった金額を持つことで、計画的でない支出が増えるリスクがあります。
分割受け取りのメリット・デメリット
メリット
- 安定した収入源を確保できる
- 毎年一定額を受け取るため、退職後の生活費として計画的に使いやすい。
- 控除を活用して税負担を軽減できる
- 公的年金等控除を毎年適用できるため、非課税または低税率で済む場合が多い。
デメリット
- 一度にまとまった資金が得られない
- 大きな支出(ローン返済や医療費など)に対応しにくい。
- 受け取り期間中に税制変更の可能性がある
- 分割期間が長期にわたるため、税制が変わるリスクがあります。
一括と分割、どちらが向いている?
- 一括受け取りが向いている人
- 退職後に大きな資金が必要な人(ローン返済や不動産購入など)。
- 自分で運用や投資を行いたい人。
- 分割受け取りが向いている人
- 退職後の生活費として安定的に資金を確保したい人。
- 節税を重視し、控除を毎年活用したい人。
退職金の受け取りに関する注意点
- 会社の退職金制度を確認
- 分割受け取りが可能かどうか、事前に会社の退職金規定を確認しましょう。
- 税制変更に注意
- 長期的な計画を立てる場合、将来の税制変更に備える必要があります。
- 生活資金の確保を優先
- 一括でも分割でも、生活資金が不足しないよう計画を立てることが重要です。
まとめ
退職金を一括で受け取るか、分割で受け取るかは、税金や生活設計に大きな影響を与えます。
一括受け取り
- まとまった資金が得られる。
- 退職所得控除で税負担が軽減される。
分割受け取り
- 毎年安定した収入が確保できる。
- 公的年金等控除でさらに節税が可能。
どちらを選ぶかは、生活資金の必要性や税負担の軽減効果を考慮して計画を立てることが重要です。
会社の退職金規定や税制について不明な点があれば、専門家(税理士やファイナンシャルプランナー)に相談することをおすすめします。