法人を設立し、一人社長として経営を始めると、役員報酬や経費に関する悩みがつきものです。
その中でも大きな割合を占めるのが社会保険料です。
報酬額に応じて負担額が増えるため、計算方法や節約のコツを知っておくことが重要です。
本記事では、一人社長の社会保険料の計算方法や負担額を軽減する方法を具体的に解説します。
Contents
一人社長が社会保険に加入する必要性とは?
一人社長であっても、法人を設立した場合、基本的に社会保険への加入が義務付けられます。
これは、法人の代表者が労働者であるかどうかに関わらず適用されます。
社会保険への加入が必要な理由
- 法人設立=会社の従業員として扱われる
法人を設立すると、代表者も従業員として社会保険に加入し、健康保険料や厚生年金保険料を支払う必要があります。 - 社会保険未加入は罰則の対象に
社会保険に加入しないと、後日未払い分を遡って請求される可能性があり、罰則が科されることもあります。
社会保険料を支払うメリット
- 医療保障の充実
健康保険により、医療費の負担が3割で済みます。さらに傷病手当金や高額療養費制度の対象にもなります。 - 将来の年金受給額が増える
厚生年金に加入することで、国民年金よりも高い年金を受給することができます。
社会保険料の計算方法と内訳
社会保険料は、役員報酬(給与)に基づいて計算されます。
具体的な計算方法と内訳を見ていきましょう。
社会保険料の内訳
- 健康保険料
医療費負担を軽減するための保険料。地域や保険組合によって料率が異なります(協会けんぽの場合、約10%)。 - 厚生年金保険料
老後の年金や障害年金を支給するための保険料。料率は一律で**18.3%(2023年度)**です。 - 雇用保険料
一人社長の場合、通常は雇用保険の対象外ですが、従業員を雇っている場合は従業員分を負担する必要があります。
会社負担と個人負担
- 社会保険料は、会社負担分と個人負担分を合わせて支払います。
- 通常、負担割合は以下の通りです。
負担項目 | 個人負担割合 | 会社負担割合 |
---|---|---|
健康保険料 | 約5% | 約5% |
厚生年金保険料 | 9.15% | 9.15% |
計算例:月額報酬30万円の場合
項目 | 個人負担額 | 会社負担額 | 合計負担額 |
---|---|---|---|
健康保険料 | 15,000円 | 15,000円 | 30,000円 |
厚生年金保険料 | 27,450円 | 27,450円 | 54,900円 |
合計 | 42,450円 | 42,450円 | 84,900円 |
役員報酬と社会保険料の関係:報酬額が保険料に与える影響
役員報酬の額が高くなるほど、社会保険料の負担も増加します。
一人社長の場合、役員報酬の設定が社会保険料の負担額に直結するため、慎重に設定することが重要です。
報酬額を抑えることで負担を軽減
- 月額報酬を88,000円未満に設定すれば、社会保険の加入義務を回避することも可能です。ただし、これにはデメリット(保障の減少など)があるため注意が必要です。
社会保険料の負担を軽減する方法とは?
一人社長の社会保険料負担を軽減するためには、以下の方法が有効です。
1. 役員報酬を最適化する
- 報酬額を月額20万円以下に設定することで、社会保険料を抑えることが可能です。
- ただし、報酬を低く設定しすぎると、生活費や将来の年金額が減少するリスクがあります。
2. 小規模企業共済を活用する
- 小規模企業共済に加入すれば、節税効果が得られるほか、将来の退職金として活用できます。
- 社会保険料そのものを軽減するわけではありませんが、全体の税負担を抑えることができます。
3. 社会保険料を免除する選択肢
- 報酬をゼロに設定すれば、社会保険料の支払い義務は発生しません。ただし、生活費の捻出や将来の年金受給額に影響が出るため、慎重に検討する必要があります。
社会保険料の計算例:報酬額ごとのシミュレーション
役員報酬額ごとに、社会保険料の負担がどのように変わるのかを具体的にシミュレーションします。
月額報酬20万円の場合
項目 | 個人負担額 | 会社負担額 | 合計負担額 |
---|---|---|---|
健康保険料 | 約10,000円 | 約10,000円 | 約20,000円 |
厚生年金保険料 | 約18,300円 | 約18,300円 | 約36,600円 |
合計 | 約28,300円 | 約28,300円 | 約56,600円 |
月額報酬30万円の場合
項目 | 個人負担額 | 会社負担額 | 合計負担額 |
---|---|---|---|
健康保険料 | 約15,000円 | 約15,000円 | 約30,000円 |
厚生年金保険料 | 約27,450円 | 約27,450円 | 約54,900円 |
合計 | 約42,450円 | 約42,450円 | 約84,900円 |
月額報酬40万円の場合
項目 | 個人負担額 | 会社負担額 | 合計負担額 |
---|---|---|---|
健康保険料 | 約20,000円 | 約20,000円 | 約40,000円 |
厚生年金保険料 | 約36,600円 | 約36,600円 | 約73,200円 |
合計 | 約56,600円 | 約56,600円 | 約113,200円 |
月額報酬50万円の場合
項目 | 個人負担額 | 会社負担額 | 合計負担額 |
---|---|---|---|
健康保険料 | 約25,000円 | 約25,000円 | 約50,000円 |
厚生年金保険料 | 約45,750円 | 約45,750円 | 約91,500円 |
合計 | 約70,750円 | 約70,750円 | 約141,500円 |
月額報酬20万~50万の社会保険料比較表
一目で比較できるよう、報酬額ごとの社会保険料(個人負担・会社負担・合計)の比較表を以下にまとめました。
報酬額(月額) | 健康保険料(個人) | 厚生年金保険料(個人) | 合計個人負担 | 合計会社負担 | 全体負担額 |
---|---|---|---|---|---|
20万円 | 約10,000円 | 約18,300円 | 約28,300円 | 約28,300円 | 約56,600円 |
30万円 | 約15,000円 | 約27,450円 | 約42,450円 | 約42,450円 | 約84,900円 |
40万円 | 約20,000円 | 約36,600円 | 約56,600円 | 約56,600円 | 約113,200円 |
50万円 | 約25,000円 | 約45,750円 | 約70,750円 | 約70,750円 | 約141,500円 |
解説ポイント
- 健康保険料:報酬額に対する料率は一定(東京都協会けんぽ:約10%)ですが、報酬額が高くなるほど負担額が増えます。
- 厚生年金保険料:報酬額に対して18.3%(半分ずつ会社と個人で負担)の料率が適用されます。
- 会社負担と個人負担:健康保険料と厚生年金保険料は、会社負担分と個人負担分が1:1の割合で分担されます。
社会保険料負担を最適化するには?
役員報酬の設定次第で、社会保険料の負担をある程度コントロールすることが可能です。
ただし、報酬を下げすぎると生活費や将来の年金額に影響するため、最適な報酬額を設定することが重要です。
税理士や社労士と相談しながら計画を立てることをおすすめします!
よくある質問(FAQ)
Q1. 社会保険料を支払わない選択肢はありますか?
報酬をゼロに設定することで社会保険料の支払いを回避できますが、医療保障や年金受給額に影響が出るため慎重に検討しましょう。
Q2. 一人社長でも労災保険に加入できますか?
労災保険は原則として労働者が対象ですが、一人社長の場合でも「特別加入制度」を利用すれば加入可能です。
Q3. 社会保険料と国民健康保険、どちらが得ですか?
国民健康保険は所得に応じた計算となるため、収入が低い場合は負担が軽減される場合があります。
ただし、将来の年金額が減少する可能性があります。
まとめ:一人社長の社会保険料を正しく計算して負担を最適化しよう
一人社長にとって、社会保険料は避けられない負担ですが、役員報酬の設定を最適化することでコストを抑えることが可能です。
また、保障内容や将来の年金受給額を考慮しながら、自分にとって最適な保険料のバランスを見つけることが大切です。
不明点がある場合は、税理士や社会保険労務士に相談してみてください!