Mpraeso(エンプレーソ)のCEOを務める田口愛さん。
現在彼女がガーナで取り組んでいるビジネスとは?
2021年11月、本田圭佑さんや冨永愛さんなどと並んで、ニューズウィーク日本版の
「世界に貢献する日本人30」にも選ばれた彼女はどんな人なのでしょうか。
その激レアな生い立ちとは?
Contents
田口愛さんの激レアな生い立ち
田口愛さんは、1998年8月、岡山県に生まれました。
子どもの頃から”食いしん坊”だったという彼女の大好物はチョコレート。
幼少の頃、ひいおじいさんから家に行くたびに1粒のチョコをいただいていたそうです。
田口さんはそれを大切に保管して、テストや発表会の前に食べて元気を出していたのだとか。
いつもチョコに救われていたという田口さんは、いつしか『チョコの生産者に感謝を伝えたい』と思うようになったのだそうです。
しかしチョコレートについて調べるうちに、カカオ豆の主要生産地であるガーナの貧困問題や児童労働者問題を知ります。
「おいしいチョコの裏側にそういう問題があると知って、すごいショックでした……。その事実を知ったのは中学生のときだったんですが、そこからしばらくチョコを食べられなくなってしまって。次第に、『とにかくガーナへ行って、自分の目で現状を確かめたい』と考えるようになりました」
田口愛さんより
大学入学後にバイトを掛け持ちして渡航費を貯め、2018年7月、単身でガーナへ。
ガーナでは、先述したエンプレーソ地域アマンフロム村に滞在し、カカオ農家の人々と寝食を共にする。
すると1週間ほどで、ガーナのカカオ農家の”現状”が見えてきたという田口さん。
「現地の人々の日給は2ドル程度で、まさに”その日暮らし”でした。そしてガーナのカカオ農家さんにとって、カカオはただの”金のなる木”。食べ物としての認識はなかったですね。私が『チョコがすごい好き』と伝えても、『チョコは高価で、食べたことがない』という人ばかりで。その現実にすごいショックを受けました」
田口愛さんより
それから彼女の革命が始まりました。
田口愛さんが取り組んでいることとは?
バレンタインの定番スイーツといえばチョコレートですよね。
日本では、チョコレートの原料となるカカオ豆の約8割を、アフリカのガーナから輸入しています。
しかしガーナのカカオ農園で働く人のなかには日給約2ドルで生活する人もいらっしゃるそうです。
そんな彼らにとってチョコレートは高級品のため、味を知らない人も大勢いるのだそうです。
そんなガーナの現状を変えるため、田口さんはカカオ豆の買い取り制度の変革を行っているのです。
ガーナ全土のカカオ豆は、「ココボード」と呼ばれる政府のカカオ管理局が”量”に応じて同一価格で買い取っており、質が悪くても量さえ納めれば収入が得られるため、ガーナのカカオ農家は品質にこだわらなくなってきているのだとか。
田口さんいわく、
「ガーナのカカオ豆は品質が悪くて、取引が面倒くさいと思われていて、ガーナ以外の国からカカオ豆を輸入しようというムーブメントが世界的に増えている」
とのこと。
買い手が減少 = ガーナのカカオ農家の収入も減少 → そして生活が苦しくなる。
そこで彼女は、拠点としているエンプレーソ地域アマンフロム村のカカオビジネスから改革を始めたんですね。
田口さんのガーナのための活動
「最近は、現地のカカオ農家さんから『たくさん注文が入った』って聞けるのがうれしいですね。本当にいい関係を築けています」
どうやってこのようになったのか。
田口愛さんはカカオ豆の買い取り制度について、ガーナ政府と交渉したのです。
カカオの質に合った価格で買い取りを行う独自取引を実験的に認めてもらう!
それを、アマンフロム村のカカオ農家と政府の間にMpraesoが入ることによって実現!
そしてアマンフロム村のカカオ農家は適正価格でカカオ豆の取引が可能となったのです。
同時に田口さんは、アマンフロム村のカカオ豆の品質向上にも寄与。
タンザニアやインドネシア、台湾などで良質なカカオ豆の生産方法を学び、日本の糀屋職人からカカオ豆の品質を左右する「発酵」の知識を取り入れたのだそう。
それらをアマンフロム村のカカオ農家に共有し、カカオ豆の品質を高めていったのです!
田口さんのガーナの人達への恩返し
田口愛さんはなぜここまでするのでしょうか?
実は田口さんはガーナでマラリアにかかったのだそう。
命の危険にさらされた時、ガーナの人達が助けてくれたのだとか。
何かしらの恩返しがしたかったのだと田口さん。
最初は『カカオビジネスの革命』なんて考えてなかったのだそうです。
ガーナの人々に、チョコレートのおいしさを伝えたい――。そう考えた彼女は、日本から持参した米粉用のミキサーとYouTubeで調べたレシピを活用し、カカオ豆から”即席チョコレート”を自作。
現地の人々に振る舞うと…
「60年もカカオ農家をやっている方が、『人生で食べたものの中で一番おいしい』って言ってくれて、すごい感動的でしたね」
田口さんより
その後、約2カ月かけてガーナを巡り、各地でチョコレートの作り方や味を伝えるワークショップを開催。
2018年9月に帰国すると今度は、ガーナのカカオ豆の魅力を伝えるためにチョコレート専門の菓子職人を訪問。
ガーナのカカオ豆の買い取り制度や品質の実態を知ったあと、詳細を把握した田口さんは、
「自分がガーナのカカオ豆を何とかしよう」
と決意されたんですね。
クラファンで約427万円の支援を集めた
ガーナ政府のカカオ関係者に、アマンフロム村民の親戚や同級生などの”ツテ”をたどって接触。
田口さんは2019年3月にガーナへ戻ると、独自取引のルート開拓とカカオ豆の品質向上に取り組みました。
その間に、田口さんの取り組みに賛同した日本のカカオ専門商社・立花商店(大阪市)と協力関係を構築。
アマンフロム村のカカオ豆を日本にコンテナ輸出するプロジェクトを進めました。
チョコレートの生産や販売をするためには会社が必要だと思った田口さんは、2020年6月にMpraeso合同会社を立ち上げる。
2020年8月、ガーナで本格的なチョコレート工場を建設するためのクラウドファンディング(目標額100万円)を実施。
すると予想を大きく上回る約427万円の支援が集まったのです。
2021年1月、ガーナ産カカオを使ったチョコレートブランド「MAAHA CHOCOLATE」を立ち上げました。
どんどん突き進んでいきますね!
すごい行動力ですよね。
「MAAHA CHOCOLATE」のリブランディング
ガーナの伝統的なシンボルマーク「アディンクラ・シンボル」をデザインに採用し、今年1月、「MAAHA CHOCOLATE」をリブランディング。
華やかで目を引くパッケージへと一新されました。
「このシンボルには、”母なる大地への愛”などの深い意味が、それぞれに込められているんです。ガーナの人々にそれを聞いたとき『本当の豊かさとは、こういうところにあるんだな』と思って。周りからは貧しいと思われているけど、彼らは精神的な豊かさや自然の豊かさにあふれているんです。私たちはその豊かさを学び、伝えていくべきだと思ったので、このシンボルを取り入れました」
田口さんより
ガーナのためにできること
全く休みなく突き進んでいく田口愛さん。
田口さんは、
ガーナのカカオ農家さんは日々の生活が本当に苦しい。
マラリアにかかっても医療費が出せない、夢を持つ子どもたちが学校に行けない。
という現地の状況を目の前で見てきたとのこと。
そういうのを考えると、ガーナの人々のために、突き進みたい。
田口さんはつねに、『ガーナのために今、何ができるか』ということを考えていらっしゃるそうです。
そして、ガーナでの本格的なチョコレート工場の建設にも取り組んでいます。
今はアマンフロム村の小さなミキサーでカカオ豆を加工しているそうですが、チョコレート工場が完成すれば、カカオ豆の品質をさらに高めたり、加工品を現地生産したりすることも可能なんだそうです。
素晴らしいですね。
これからのご活躍も期待しております!