特別支給の老齢厚生年金は、60歳から65歳までの間に受給可能な年金制度ですが、在職中の収入などの条件によって減額される場合があります。
本記事では、特別支給の老齢厚生年金が減額される仕組み、計算方法、回避策についてわかりやすく解説します。
Contents
特別支給の老齢厚生年金とは?
1. 制度の概要
特別支給の老齢厚生年金は、昭和36年4月1日以前生まれの方を対象とした制度で、60歳から65歳の間に一部の老齢厚生年金を前倒しで受給できるものです。
- 対象者:厚生年金の加入期間がある方。
- 支給内容:報酬比例部分、および条件を満たす場合は定額部分が加算されます。
2. 通常の老齢厚生年金との違い
特別支給の老齢厚生年金は、65歳以降に支給される通常の年金とは異なり、雇用者の早期退職に対応するための一時的な制度です。
そのため、65歳以降の年金とは別に減額や停止のルールが適用されます。
減額される理由とは?
1. 在職老齢年金制度の影響
在職老齢年金制度では、60歳以上で働いている場合、給与や賞与の合計が一定額を超えると、特別支給の老齢厚生年金が減額または停止される仕組みがあります。
- 基準額:月額28万円(総報酬月額相当額)。
- 計算方法:給与と年金額の合計が基準額を超えた場合、超えた金額に応じて年金が減額されます。
2. 年金が全額停止されるケース
以下の場合、特別支給の老齢厚生年金が全額停止されることがあります。
- 給与と賞与の合計が高額で基準額を大幅に超える場合。
- 年収が一定額以上(約600万円以上)の場合、支給額がゼロになることもあります。
減額の具体的な計算方法
1. 計算式
特別支給の老齢厚生年金の減額は、以下のように計算されます。
- 総報酬月額相当額(給与+賞与の月割額)+基本年金月額。
- 合計が28万円を超えると、超過分の半額が年金から減額されます。
2. シミュレーション例
例1. 総報酬月額相当額:20万円、年金月額:10万円の場合
- 20万円+10万円=30万円(基準額を2万円超過)
- 減額額:2万円 × 50%=1万円
- 年金支給額:10万円-1万円=9万円
例2. 総報酬月額相当額:40万円、年金月額:15万円の場合
- 40万円+15万円=55万円(基準額を27万円超過)
- 減額額:27万円 × 50%=13.5万円
- 年金支給額:15万円-13.5万円=1.5万円
減額を回避する方法
1. 収入を調整する
働きながら年金を受給する場合、収入を基準額以下に抑えることで減額を回避できます。
- 例:給与額を調整して総報酬月額相当額を28万円未満にする。
2. 働き方を見直す
- フルタイム勤務からパートタイム勤務に変更し、総収入を抑える。
- 年収を調整し、基準額を超えない範囲で働く。
3. 年金受給のタイミングを調整
特別支給の老齢厚生年金の受給を遅らせることで、働いている間の収入と年金の調整がしやすくなります。
65歳以降の年金額への影響
1. 特別支給期間中の減額が65歳以降に影響するか
- 特別支給の老齢厚生年金が減額された場合でも、65歳以降の老齢厚生年金の額には影響しません。
- 減額されるのはあくまで特別支給期間中の支給額です。
2. 65歳以降の受給額を最大化するには
- 働き方や収入を調整し、特別支給期間中の減額を最小限にすることで、65歳以降の年金受給計画を安定させられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 在職中の収入をどのように計算するのですか?
給与(基本給+手当)と賞与の月割額を合計し、「総報酬月額相当額」として計算します。
Q2. 年金が全額停止される場合もありますか?
給与と年金額の合計が基準額を大幅に超えると、特別支給の老齢厚生年金が全額停止されることがあります。
Q3. 特別支給の老齢厚生年金を受けずに繰り下げることはできますか?
特別支給の老齢厚生年金には繰り下げ制度は適用されません。
ただし、65歳以降の老齢厚生年金は繰り下げ受給が可能です。
まとめ:特別支給の減額を正しく理解して最適な選択を
特別支給の老齢厚生年金が減額される理由や仕組みを理解することで、収入と年金のバランスを上手に調整することができます。
在職中の収入や働き方を見直し、自分にとって最適な年金受給方法を選択しましょう。