39. 仮定法の基本形
「もし~ならば」という意味を表すのに if を用いることは、中学校でも学びました。
ここでは、その if の導く節の表す内容が、現実とちがうことや、現実にはありそうにないことである場合について学びます。
英語ではこのような場合に、現実をそのまま述べるときと動詞の形がちがってくるのです。
① 仮定法とは
次の二つの文を比べてみましょう。
❶ If he comes, I will tell it to him. 〔直説法〕
(彼が来れば、そのことを話してあげよう)
❷ If he came, I would tell it to him. 〔仮定法〕
(彼が来れば、そのことを話してあげるのだが)
❶はふつうの「もし~ならば」の意味を表す文(直説法)。
実際に「来るか、来ないか」は分からないが、現実に起こりうることとして
「もし来れば」と述べているのです。
これに対して、
❷は過去形の came と would が用いられた仮定法の文。
彼が来ることは現実とはならないだろうと思っていて、その上で仮定をしている。
つまり、彼は来ることはないと思うが、「もし来ると仮定すれば」と述べている
わけですね。
<NOTE>
上の❶では、現在形が、現在または未来のことがらを表し、❷では過去形が現在または
未来のことがらを表している。
英語の「もし~ならば」には、このように、
❶「ありうること」を表す場合と、
❷「現実とはちがう仮定」を表す場合とがあります。
ふつうの「もし」 | ありうることを表す | if you like it (もし君が好きなら) |
仮定法の「もし」 | 現実とはちがう仮定 を表す |
if I were you (もし僕が君であれば) |
この二つを比べてみると、動詞の形にちがいがありますね。
日本語ではこれら二つの仮定のしかたを区別しませんが、
英語では動詞の形をかえて区別するんです。
② 仮定法過去・仮定法過去完了
仮定法の動詞は、あとで学ぶようにいろいろな構文に用いられますが、基本の形は
if 節に過去形または過去完了を用いる形です。
これをそれぞれ仮定法過去、仮定法過去完了と呼びます。
このとき主節には助動詞の過去形を用い、そのあとの動詞は、
❶現在の事実と違うとき → 動詞の原形(~するだろう[に])、
❷過去の事実とは違うとき →「have + 過去分詞」
(~しただろ う[に])
にします。
if 節の形 | 主節の形 |
〔仮定法過去〕 もし~であれば if + S + were ~ |
…するのだが S + (would, should, could, might ) + 動詞の原形… |
〔仮定法過去完了〕 もし~であったら if + S + 過去完了~ |
…したのだが S + (would, should, could, might ) have + 過去分詞… |
仮定法過去は、動詞の過去形を用いますが、表す内容は現在または未来のこと。
一方、仮定法過去完了は動詞の過去完了を用いますが、表す内容は過去のこと。
If I were a young man, I would go with you. 〔仮定法過去〕
(もし私が若ければ、君と一緒にいくのだが)
※実際は若くないんですね。
→ As I am not a young man, I won't go with you.
<NOTE>
❶仮定法過去の if 節では、主語の人称・数に関係なく be 動詞は were を用いる。
ただし口語では was を用いることもある。
❷主節に用いる過去形の助動詞のうち should はおもにイギリスで主語が1人称の
ときに用いられる。
If he had been there, he would have seen the accident.
(もし彼がそこにいたならば、その事故を見ただろうに) 〔仮定法過去完了〕
※実際は「いなかった」んですね。
→ As he wasn't there, he didn't see the accident.
<NOTE>
if 節が仮定法過去完了で、主節が would など+動詞の原形になることもある。
「もし(あのとき)~だったら、(今)…だろう」の意味。
If he had passed the exam, he would be a college student now.
仮定法過去完了 仮定法過去
(もそ試験に受かっていたなら、彼は今、大学生になっているだろう)
③ if ~ should, were to
可能性がきわめて少ないと思われることについて、「万一~ならば」、「仮に~としたら」の意味で、if 節に「should + 動詞の原形」または「were to + 動詞の原形」を
用いることがあります。
If I should be late, please don't wait for me.
([遅れないと思うけど] 万一僕が遅れたら、どうぞ待たないで)
If I were to go to another planet, I would go to Mars.
(もし仮にほかの惑星に行くとすれば、私は火星に行くだろう)
if 節の形 | 主節の形 |
万一~ならば If + S + (were to, should) + 原形~ |
…だろう S + (would, should, could, might)+原形… |
<NOTE>
if 節が仮定法の文の主節の中では、助動詞の過去形を用いるが、
if ~ should のあとでは、命令文や will, can なども用いられる。
●仮定法の動詞は、表す内容よりもう一つ前の時制になる。
現在または未来の事実とはちがうなら過去形
:if + S + 過去形 [were] ~
過去の事実とはちがうなら過去完了
:if + S + 過去完了~
「万一[仮に] ~ならば」
:if + S + should [were to] ~